院長 田中宏明コラム

「口から肛門までひとつながり」

当クリニックでは食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・直腸・肛門と別個に考えるのではなく、「食べ物の立場になって」その通り道全体で不調や病気を来すことはないのか、という発想で診療をしています。

どんなに栄養に完璧な食品であっても、それが「お皿の上」にあるがままではからだのためになりません。
唇に触れ、歯で正しく咀嚼し、舌で味わい、良質の唾液を十分に混ぜ合わされ、のど(喉頭)による確実な「のみ込み」がなされてはじめて、胃腸科医の専門分野である食道にたどりつきます。

また、「食べ物の通り道」の一部、すなわち口と舌、そして喉頭につらなる鼻側の咽頭は、生きるために不可欠の「空気の通り道」でもあります。

近年では「空気の通り道」を正しく使っていない方が増えました。姿勢の悪化、かまなくても飲み込める柔らかい食事が増えたことで歯や舌をうまくつかえなくなったこと、飲み物をのみながらの食事をする習慣などが原因です。これで起こるのが、鼻とのどの中間、すなわち上咽頭が原因となる病気です。

鼻のトラブル、咳がとまりにくい、めまい、治りにくい頭痛、痰がひっかかる・・・などを感じたことはありませんか?

2004年、九州ではじめて本格的に経鼻内視鏡をはじめた私にとって、この上咽頭は胃カメラをするときに必ず通過するところにも関わらず、耳鼻科の領域として熱心に観察をしていないところでもありました。

しかし、2014年になって慢性上咽頭炎の存在を日本病巣疾患研究会の掘田修先生、相田能輝先生、今井一彰先生、田中亜矢樹先生に教えていただいて以来、経鼻内視鏡を使っての上咽頭観察をはじめました。

ところが、現状では消化器内視鏡医による「鼻と喉の中間」(上咽頭)の観察は、当クリニック以外では実施されていないのが実情です。

日本全体では1年間に約120万件以上の経鼻内視鏡が行われていますが、そこに、後述する重症の慢性上咽頭炎があってもすべて見逃されています。まさにジュリアス・シーザーの名言にあるように「ひとは見たいものしか見ない」状況です。

これから少しでも「経鼻内視鏡をすれば耳鼻科医でなくても慢性上咽頭炎の診断ができる」ことを伝えていこうと想っています。

こちらの本(2018年2月17日発売)にも掲載されています。

2018年2月12日